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来迎國の連載を終えて。

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来迎國の連載を終えて / 私たちが挑戦したこと

こんにちは。鈴木です。
だいぶ春めいてきたとはいえ、まだまだ寒い日が続きますね。

2023年2月23日に小学館の漫画アプリ・マンガワンで『来迎國/らいごうのくに』の最終話が通常配信されました。
2020年の12月31日から連載を開始したので、足掛け2年と2カ月の連載でした。

本編を既に読まれた方はお分かりかと思いますが、この連載は人気不調による打ち切り終了で、結果的に物語は未完で終わりを迎えてしまいました。私としては、今の自分たちに可能な限りの力で挑戦出来た感触があるので、最後まで物語を描き切れずに残念ではありますが、深く納得もしています。

何より、途中からず~~~~っと人気なかったのに、最後まで読んで下さった読者の皆様と、商売としては赤字でしかなかったであろう連載をキリの良いところ(2章の終わり)まで急かさず自由に描かせてくれたマンガワン編集部様と担当編集さん(Nさん・Wさん)には感謝の限りです。

皆様の酔狂と情けと寛容と忍耐がなければ、この漫画は秒で終了だったと思います。
皆様、本当に有難うございました!!!!!リスペクツッッ!!

打ち切り連載とはいえ、この2年で学んだことがいかほどに膨大で、また貴重なものであったか、一言ではとても言い切れません。何かを理解するのに実学ほど有効なことはない。実践にまさる練習無し、とは実に正鵠を射た言葉だと身に染みて痛感しました。

思い返せば、来迎國の連載はマンガワンの「投稿トーナメント」に私が投稿したのがきっかけで編集部から連載のオファーを頂いたという経緯がありす。この時トーナメントに出した原稿のネーム(漫画の設計図)は、実は某雑誌向けに10年くらい前に描いて、没になって押し入れに眠っていたものでした。ある時読み返してみたら「コレ、面白いんじゃね?」と思い、少し修正はしましたが大部分は元ネームのまま原稿にしました。

で、トーナメントの投票結果は4位でしたが、運良く当時の編集長に拾っていただきラッキーにも連載を頂けたのでした。

トーナメント原稿の作成時に、20年来の盟友・玉野くんに背景作画を手伝ってもらっていたのですが、その時に「もし連載取れたら一緒に漫画家やらない?」と誘っていたので、連載オファーを頂いてすぐに改めて彼に聞いてみました。

その時彼は地元で会社員をやっていて、生活も収入も安定した人生をおくっていたので、それを全部捨てて先行き不安定な漫画家業に人生賭けるなんてのは、半ば断られるかなとも思っていましたが、彼は二つ返事で快諾してくれました。
(彼のそういう無邪気で楽天的なところが私は好きなのです。)



ところで、なぜ来迎國を玉野くんとの「共同制作」のスタイルにしたのか、これについて書いておきたいと思います。

来迎國の製作方式は少し特殊で、原作/作画という一般的な分業方式ではなくて、「ワンチーム制の分業方式」を採用しました。
(アメコミやウェブトゥーンの分業方式に近いものです。)

具体的には以下の担当分担で原稿を作成していました。

チームリーダー:鈴木
サブリーダー:玉野くん
背景チーフ:アシスタントさん1名(岡田ケンジさん)

【①ストーリー(ネーム)作成】
鈴木が作成。初稿を玉野君と検討したのちに、担当編集者と打ち合わせて確定させる

【②スタッフ管理・指示出し】
事前に2人で方針確認したのち、玉野くん管理下でアシスタントさんに背景作画をしていただく

【③キャラ作画】
鈴木担当。キャラ線画は全て鈴木作画。(背景も多少描きます。)

【④仕上げ着色】
玉野くん担当。特殊なパート以外は全て玉野くんが着色。

【⑤カラー仕上げ】
キャラ着色や見開きカット着色は鈴木担当。通常カラーコマや演出系の着色(擬音など)は玉野君が担当。

【⑥最終仕上げ】
鈴木担当。最終的なニュアンスを調節して全体の統一感を揃えて完成。

この様な製作方式をとった理由は、漫画製作のプロセスをアニメや映画制作の様に、

「それぞれに高い専門性を持ったスタッフが互いの特技(=個性・創造性)をぶつけ合いながらチームで1つの作品を創り上げる」

ということをやってみたかったからです。
漫画はこれまでの業界の慣習から、「1人の作家の頭の中のイメージをなるべく正確に再現するために、複数のアシスタントが作家の指示をなるべく正確に実行する」という制作スタイルが標準とされています。
これも効率的で極めて効果的な方法論ですが、私たちは「自分一人の頭からはでは出せない面白さ」に挑戦してみたいと考えていました。
チームのスタッフそれぞれがアイデアや意見を出し合い、才能をぶつけて互いにブレイクスルーを起こしながら1つの作品を生み出す、みたいな漫画制作をしてみたかったのです。

このためには(最終決断をするリーダーは必要ですが)、チームメンバーはパワーバランスが対等でなくてはならないと考えました。

その対等性を保証する枠組みとして作品の著作者クレジットを鈴木・玉野くんの共著という形を取った上で、上記の「ワンチーム制の分業方式」というスタイルを選択したのです。

他にも私たちは「収入・経費の対等」もルールとしました。
原稿料や印税など、連載から発生する収入は全て折半とし、連載に必要な経費もすべて折半とするというルールで、実際その通りにしました。

そのような意図のもとで2年連載してみて実感として感じたことは、

「ワンチーム制の分業スタイル」は新しくて面白い作品を生み出せる可能性を感じるが、うまく運用するためには従来の漫画家マインドを大きく変えないと難しい

という事でした。


私個人の感想と言うか、反省と言うか、この「ワンチーム制」を成立させる大前提である「メンバーの対等性」という事を本当に実現するためには、ある種の「作品を手放す度量」が必要だと痛感しました。

自分の頭から生まれたアイデアやストーリー、世界観、キャラクターには自分自身の分身といった側面があるせいで、どうしても執着心が強く出てしまい、「自分のもの」という意識が働いてしまう。
そうすると、もともとやりたかった「チームのスタッフそれぞれの才能をぶつけあってブレイクスルーを起こして、自分一人の頭からはでは出せない面白さを生む」という方向に持って行きずらい雰囲気が出てきてしまうのです。

チームリーダーが「作品は自分のものでは無くチーム全員のもの」と腹の底からすんなりと思えるような度量(感性?)を持てたら、「ワンチーム制」は間違いなく面白い作品を生み出すパワーを持った製作方式だと思います。

正直に言うと、今回の連載でチームリーダーとしての私は、そこまでのレベルに到達できなかったと言わざるを得ませんでした。
この点は、自分の度量の狭さに忸怩たる思いを感じずにはいられません。

ですが、それは今の自分のレベルが低かったという結果であって「ワンチーム制」というアイデアが間違っていた訳ではないと思っています。



漫画家としてのマインドの問題の他にもいろいろ課題があるのですが、見た事無いような新しくて面白い漫画を生み出すためには、やはり「新しい製作方式と新しい考え方」が必要だと考えます。

ですので、今回の連載で得た発見と、やらかした失敗を糧として次の「新しい作戦」を立て、怯まずにどんどん新たな挑戦をしていきたいと思っています。

次はどんなアイデアで漫画製作に挑むのか、自分自身でも楽しみです。

最後に、来迎國の連載の機会をくださったマンガワン編集部様、そして漫画を読んで応援して下さった読者の皆様に改めて御礼申し上げます。
誠に有難うございました!!!

力量不足の私を相棒と定め、人生賭けて2年間本気で共に闘い抜いてくれた玉野祐也くんに最大限の感謝と敬意を捧げます。

2023年3月1日 嘗玄館代表・鈴木 智

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  1. この記事によれば、連載オファーが得られたきっかけは何でしたか?regard Telkom University

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